Theory of Constraints

TOC(制約理論)

なぜ薬局は頑張っているのに、楽にならないのか

全体は「一番詰まっている所」で決まる

結論

調剤薬局の成果(安全・待ち時間・満足度・利益)は、「一番詰まっている工程(制約)」で100%決まります。全員が忙しい薬局ほど、改善が空回りしている可能性があります。

理論の解説

TOC(Theory of Constraints)とは何か

TOC(制約理論)は、物理学者・経営学者であるエリヤフ・ゴールドラットが提唱したマネジメント理論です。

TOCの核心は、驚くほどシンプルです。

システム全体の成果は、たった1つの制約(ボトルネック)によって制限される。

ここでいう「制約」とは、

  • (鑑査できる薬剤師が1人しかいない)
  • 工程(投薬が詰まる、一包化が集中する)
  • ルール(受付を止められない、優先順位が曖昧)

など、全体の流れを止めている一点のことです。

重要なのは、👉 制約以外をどれだけ改善しても、全体は良くならないという点です。

調剤薬局で起きている「TOC的に間違った改善」

多くの薬局で、こんな改善が行われています。

受付を速くする
調剤を効率化する
全員に同じタスクを振る
「手が空いたら何かやる」文化

一見、正しそうに見えます。しかしTOCの視点では、これは部分最適です。

何が起きるか

受付・調剤が速くなる処方箋が大量に流れ込む鑑査・投薬が詰まる待ち時間が増え、ミスリスクが上がる

👉 頑張った結果、現場が苦しくなる。

これが「改善しているのに楽にならない」正体です。

調剤薬局への翻訳|制約はどこにあるのか

薬局の制約は、ほぼ次のどれかに集約されます。

最終鑑査に立てる薬剤師
投薬対応できる人数・スペース
一包化・施設・在宅対応が集中する時間帯

ここで大事なのは、「制約は1つだけ」という前提です。
あれもこれも詰まっているように見えても、一番影響が大きい"主制約"は1つです。

TOCの5ステップ|薬局向け超実務版

TOCには有名な「5つのステップ」があります。これを薬局用の言葉に翻訳します。

制約を特定する

「今、一番待ちが発生している工程はどこか?」

「患者体験を止めているのはどこか?」

👉 ほぼ確実に 鑑査 or 投薬 です。

制約を最大限活かす

制約工程に、ムダな仕事をさせない。

鑑査担当に電話対応・雑務をさせない
投薬中に割り込みを入れない

👉 制約は"王様"。最優先で守る。

他工程を制約に従属させる

ここが一番重要で、一番できていない。

受付・調剤は「鑑査・投薬が処理できる量だけ」流す
入れすぎない勇気を持つ

👉 これは後述するリトルの法則(WIP制御)そのものです。

制約を強化する

初めてここで

人を増やす
時間を増やす
ツールを入れる

を検討します。

👉 いきなり増員するのは、TOC的には最終手段。

制約が移動したら、最初に戻る

制約は改善すると必ず移動します。

昨日は鑑査
今日は投薬
次は一包化

👉 改善は終わらないプロセスです。

KPI|TOCで見るべき数字はこれだけ

TOCでは、細かいKPIを大量に追いません。
最低限、次の3つで十分です。

制約工程の処理能力

(枚/時)

制約前のWIP

(仕掛品)

制約工程の中断回数

(回/日)

これだけで、「なぜ今日は荒れているか」が説明できます。

明日の一手|TOCの第一歩

明日やることは、たった1つです。

👉 「今、どこが一番詰まっているか」を全員で言語化する。

ホワイトボードに「今日の制約:〇〇」と書くだけで構いません。

それだけで、

無意識の入れすぎ
無駄な頑張り
事故につながる忙しさ

が、目に見えて減ります。

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