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リトルの法則

待ち時間は「人手不足」ではなく「入れすぎ」で決まる

― 薬局の混雑は、数式で説明できる ―

結論

調剤薬局の待ち時間は、「忙しいから」「人が足りないから」ではありません。入れている仕事量(仕掛品)が多すぎることが原因です。これを説明できるのが リトルの法則 です。

理論の解説|リトルの法則とは何か

リトルの法則(Little's Law)は、待ち行列理論(キューイング理論)の中核となる数式です。提唱者は ジョン・リトル

数式はこれだけです。

L = λ × W
L
システム内の滞留量
薬局内にある処方箋の数=WIP
λ
到着率(ラムダ)
1時間あたりに来る処方箋枚数
W
滞在時間
受付から薬を受け取るまでの平均時間

重要なのは、👉 到着や処理のバラつきに関係なく成立するという点です。

数字で一気に腹落ちさせる

たとえば、

到着率:
12枚/時(5分に1枚)
平均滞在時間:
30分=0.5時
このとき、
L = 12 × 0.5 = 6

つまり、常に6枚分の処方箋が「待ち」として滞留しているという意味になります。

逆に言えば、
待ち時間を半分にしたければ→ 滞留量(WIP)を半分にするしかない

薬局で起きている「典型的な誤解」

多くの薬局では、こう考えがちです。

「混んでいるから、とりあえず受ける」

「作れるときに作っておこう」

「一包化は後回しでいい」

しかしリトルの法則で見ると、これはすべて同じ問題です。

👉 WIPを増やしている。

WIPが増えると、

待ち時間が伸びる
鑑査・投薬が詰まる
集中力が落ちる
誤薬リスクが上がる

という"連鎖"が必ず起きます。

調剤薬局への翻訳|介入は2つしかない

リトルの法則が示す事実は、非常に厳密です。

Wを短くする

  • ボトルネック工程の能力を上げる
  • ムダな動線・割り込みを減らす

L(WIP)を制限する

  • 入れすぎない
  • 作りすぎない
  • 溜めすぎない

👉 これ以外の近道は存在しません。

「重い処方」を後回しにすると、なぜ詰まるのか

一包化・麻薬・在宅分包・散剤監査など、時間のかかる処方を後回しにすると、

見えないWIPが積み上がる

ある瞬間に"塊"として出てくる

全体が一気に止まる

👉 見かけ上ラクでも、リトルの法則的には最悪の選択です。

使える運用ルール(WIP制限の型)

WIP上限ルール

調剤待ちが◯枚を超えたら新規投入を止める

早期着手

一包化は最初の5分だけでも流し始める

レーン分け

短工程/長工程/在宅・施設(バッチ処理)

👉 これはDBR(ドラム・バッファ・ロープ)の実装です。

KPI|リトルの法則で見るべき指標

平均滞在時間 W(分)

WIP(調剤待ち枚数)

到着率 λ(時間帯別)

工程別処理能力(枚/時)

これだけで、「なぜ今日は荒れたか」が説明できます

明日の一手|最初の改善

明日やることは、これだけです。

👉 「今、調剤待ちは何枚か?」を全員で共有する。

ホワイトボードに数字を書く。それだけで、

入れすぎ
作りすぎ
事故につながる忙しさ

が、目に見えて減ります