システム思考(全体最適)

なぜ「良かれと思った改善」が、
薬局を苦しくするのか

― 部分最適は、全体を必ず壊す ―

結論

調剤薬局が行き詰まる最大の理由は、個々の工程を良くしすぎていることです。必要なのは「速い人」でも「優秀な工程」でもなく、全体として流れる設計です。

理論の解説|システム思考とは何か

システム思考とは、物事を「要素の集合」ではなく、相互に影響し合う"ひとつの仕組み"として捉える考え方です。

この分野を体系化した人物として有名なのが、ピーター・センゲ です。

システム思考の核心は、これです。

全体の振る舞いは、個々の能力ではなく
要素同士の"つながり方"で決まる。

調剤薬局で起きている「部分最適の罠」

現場でよくある"善意の改善"を見てみましょう。

1ケース① 調剤を速くした

調剤完了が早くなる鑑査待ちが山積み投薬が詰まる待ち時間増加・ミスリスク上昇

2ケース② 受付を増やした

処方箋を多く受けるWIPが急増鑑査・投薬が崩壊

3ケース③ 全員を忙しくした

手が空いた人に仕事を振る制約工程が見えなくなる全体の流れが悪化

どれも"その場では正しい"が、全体では逆効果。

なぜこうなるのか

理由は単純です。

薬局は受付 → 調剤 → 鑑査 → 投薬という"直列システム"
直列では、一部を速くしても全体は速くならない

むしろ、

  • 速くした工程が
  • 次工程の負荷を増やし
  • システム全体を不安定にします。

これが、「改善しているのに楽にならない」正体です。

システム思考で見ると、何を変えるべきか

システム思考では、次の問いを常に立てます。

「この改善は、次の工程に何を起こすか?」

調剤薬局での翻訳

調剤を速くする前に→ 鑑査・投薬は耐えられるか?

受付を増やす前に→ WIPは制御できるか?

"次工程目線"がない改善はしない。

TOC・DBR・フロー効率との関係

ここで、これまでの理論が一本につながります。

TOC

全体を決める制約を見る

DBR

入れすぎを止める

フロー効率

待ちを減らす

タクト思考

需要の波に合わせる

システム思考

それらを"全体として整合"させる

システム思考は、これまでの理論を束ねる"上位視点"です。

薬局マネジメントでの実装ポイント

1評価指標を「個人」から「流れ」へ

❌ 従来の指標

枚数
スピード

✅ システム思考の指標

リードタイム
WIP
待ち時間

2改善は「一箇所ずつ」

同時多発的に変えない。

1つ変える全体の反応を見る次を決める

システムは、必ず反作用を起こす。

3"楽になったか"を判断基準にする

現場が落ち着いたか
投薬の質が上がったか
患者対応に余白ができたか

これらは、全体最適が進んでいるサインです。

KPI|システム思考で見る指標

全体リードタイム

受付から投薬までの総時間

制約前後のWIP

仕掛品の滞留状況

時間帯別の待ち時間

ピーク時の負荷状況

投薬中断回数

集中力の維持状況

個人KPIより、流れKPIを優先。

明日の一手|システム思考の第一歩

明日やることは、これだけです。

「この改善は、次工程に何を起こすか?」を
口に出してから実行する。

それだけで、

  • 無駄な改善
  • 事故につながる忙しさ

が、確実に減ります。